Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]



「福嶋」



「は…い」



西崎さんは真剣な眼差しでまっすぐ俺を見据える。



「おまえが何をしたいのか俺には分からない」



「……」



「…村瀬の気持ちも、おまえが言うようにはとても思えない」



西崎さんはそれだけ言うと俺に背を向けた。





「西崎さんは、勝ち戦しかしないんですか? 村瀬の気持ちが確定するまで自分からはアクションを起こさないつもりですか?」





西崎さんは足を止めて振り返る。



「勝ち戦も何も、俺の気持ちは村瀬に向いていない」



「じゃあ何で…?」



何で抱きしめたりなんか…



「今日…村瀬に全部話したんだ。生い立ちから荒れていた少年時代、そして女性関係。
…村瀬の中で俺に対して抱いていたイメージが壊れたんだろうな。あからさまに態度が聞く前と後とで激変したよ」



自嘲の笑いをもらす西崎さん。



「…何でいっぺんにそんなこと」



別に言う必要ないのに。



話を聞いた後に村瀬がどれだけショックを受けたか…。



5年近く純粋に想い続けて今になっていっぺんにそんなこと聞かされたら誰だって心が揺れるはず。



頭の整理もつかないはず。



「…たとえおまえの話が本当でも、俺は村瀬には相応しくない。俺には村瀬は幸せにはできない」



「…西崎さんには幸せに出来なくても、村瀬には西崎さんを幸せにすることが出来るかも知れませんよ?」



「……」



「…村瀬は見るからに男に守ってもらって、大切に愛されて、生涯幸せにしてもらうようなタイプですけど。

でもあいつには、自分を愛してくれた男を、そいつが村瀬にもたらす幸せ以上に幸せにしてくれる、そういう力があると思います」



一方的に相手を幸せにしてやろうって思うんじゃなく、お互いが相手を幸せにしてあげようって気持ちがないと何事もうまくいかないはずだ。





< 161 / 208 >

この作品をシェア

pagetop