Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「…福嶋はなんだかんだでいい恋愛してきてんだろうな」
「俺は…べつに」
胸を張っていい恋愛だったなんて言えるものは結果的にいえば1つもなかった。
その過程でならあったけれど。
「…村瀬のこと本気なんだな?」
「はい」
揺るぎない瞳で西崎さんをまっすぐ見つめる。
「ならしっかり幸せにしてやれ」
「…!」
西崎さんは力なく微笑んで俺に背を向けた。
こんだけ言っても西崎さんの気持ちは変わらないんだな。
ひどく落胆したのと同時に怒りが込み上げてきた。
こんなてんで勝負にもならない相手のために、俺はどんだけ時間を無駄にしてきたんだよ。
どんだけ慎重に物事を推し進めてきたんだよ。
それよりも村瀬が純粋に費やした5年ものの月日を、もう二度と戻らない時間を、西崎さんのために諦めた夢も潰したチャンスも。
すべて…
すべて報われないのならせめて――…
「社員旅行であいつのことをフッてください」
西崎さんはピタリと足を止めるもののこちらはいっさい振り返らない。
いつもは大きくて頼りがいのある広い背中なのに、今はただ冷たく突き放すような背中にしか見えない。
俺はその背中に向かって最後の挑戦状を叩きつけた。
「お願いします。沖縄で村瀬を手酷くフッて下さい。
もう二度と西崎さんの顔なんか見たくないってほどに。
あいつが――…店を辞めるって言い出すくらいに」