Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「なんだ…しきりにドア叩くから警備会社の奴かと思ったら…
何しに来たんだよ、こんな時間に」
「な…何しにってお店が心配で」
「…心配?」
「この雨だし、三上川が氾濫でもしたら大事な商品がみんな水に浸かると思って」
「あー…」
「あー…ってね! もういい、どいて!」
のんきな福嶋くんに軽く憤りを感じて事務所に押し入り、福嶋くんを押しのけてバックヤードに行く。
「…え?」
…うそ。
ストックしてあった在庫がほとんどみんな高い場所へと移動がされていた。
「これ…福嶋くんがやったの?」
「…ああ」
事務所のドアにもたれタバコをくわえながらぶっきらぼうに答える福嶋くん。
「…1人で?」
「ほかに誰がいるんだよ」
水没が心配されていた商品の避難はバックヤードの分だけほぼ済んでいた。
あとは店頭に出されている商品のみ。
福嶋くんは遅番の社員が帰ったあと、あたし同様、河川の氾濫が心配になり、居残って商品を高い場所へと避難させていたんだそうだ。
「…福嶋くん、ごめん」
「は? 何で謝るんだよ」
「…ちょっと見直した」
「あのな〜ちょっとだけかよ(笑)」
「だって…あんまり褒めると調子に乗るから」
「…確かに(笑)」
「確かにって…自分でもよく分かってるんじゃん(笑)」
「まあな(笑)」
あたしたちはひとしきり笑い合った。