Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]



「…自分に…正直に…」



ハコさんはあたしの言葉を反芻しながら深く考え込む。



自分で言っておきながら今の言葉はあたしの胸にもずしりと重くのしかかった。



――自分に正直に。



このごろあたしも自分の気持ちが分からなくなるときがある。



西崎さんが好きなはずなのに、ときどき福嶋くんのことが頭から離れないときがある。



福嶋くんがほかの女の子と親しくしていたらなぜか締めつけられたように胸が苦しくなる。



西崎さんの心の闇とちゃんと向き合おうって決めても、ふとした瞬間に福嶋くんのあの言葉がよみがえってきて心を掻き乱される。





『――好きだよ』





あの“好き”は単にあたしを苛めるのが好きなだけ。



あたし自身を好きなわけじゃない。



分かってるのに言われるたびに体の芯が甘く疼く。



まるで甘い蜜に誘われるように福嶋くんを求めてしまう。



…ほんとあたし、どうしちゃったんだろう。



知らず知らずのうちに福嶋くんの存在がどんどん大きくなっている。






――…自分に正直に。






あたしは…



あたし自身は…



自分に正直になるとしたら誰を選ぶんだろう…





西崎さんの心の闇とちゃんと向き合うって決めた。



あたしは西崎さんを好きだという自分を裏切れない。



だけど…



それだと自分に嘘をつくことになるのかな――…







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