Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「――知り合いって、ひょっとして福嶋のことか?」
傘を手にし、玄関を出て行こうと背を向けた村瀬に思いきって投げかける。
店の従業員は福嶋だけじゃない。
だけど何となく福嶋だと思った。
福嶋しかいないと思った。
村瀬がここまで必死になるのは福嶋以外に考えられないと思った。
「…福嶋のところに行くんだろ?」
もう一度問いかけると村瀬は硬い笑顔で振り返った。
「まさか。違いますよ。福嶋くんなわけないじゃないですか」
「……」
「じゃあ行ってきますね!」
俺が言葉をなくしていると、明るくそう言って村瀬は玄関を飛び出していく。
走り去る村瀬の足音と、ドアの閉まる音だけが、やけに耳に響いた…。
どうして…
どうして俺に嘘をつくんだ…?
どうしてそんな悲しい瞳をして俺を見るんだ…?
どうして俺は…
こんなにも…胸が痛いんだ――?
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