Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]
「――どこだよ?」
「え?」
「西崎さんのマンションの場所」
「あ…瑞穂町」
「運転手さん、瑞穂町までお願いします」
タクシーは走り出した。
車内にはFMラジオが流れているけど、リスナーに向けて深夜にもかかわらず軽妙なトークで盛り上げているDJに申し訳ないぐらい車中は重苦しい空気が漂っている。
福嶋くんはあれからずっと窓の外を眺めたまま、あたしたちの間に会話は一切ない。
福嶋くんの右横に座っていたあたしは、ふいに福嶋くんの痛々しい右腕に目がいって、
自分でもどうしてこういう行動に走ったのか分からないけれど、
何だかすごく切なくて苦しくて、
知らず知らずのうちに膝の上にあった福嶋くんの手に自分の手を重ねていた。
福嶋くんはあたしの手を振り払うことはせず、相変わらず窓の外を眺めたままぎゅっと握り返してくれて。
そうしているうちに安心感に包まれて、あたしの瞼はだんだんと重たくなっていった――。
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