Eternal Triangle‐最上の上司×最上の部下‐[後編]



『おまえ自身…何かやりたいことはないのか? このまま好き放題生きていくってわけにはいかないだろう? いつかは家庭を持って家族を養ってかなきゃならないし』



『やりたいことねぇ…』



『ウチは就職する奴らばかりだけど、もしも進学したいって気があるなら出来るかぎり力になるぞ』



進学……また勉強すんのもなぁ。



ふと頭に優花の顔が浮かんだ。



菜月に聞いた話によると優花は大学を卒業して大手住宅メーカーに就職したらしい。



相変わらず大学時代から付き合っていた恋人とは順調でこのままいけば結婚かなって菜月ははしゃいでいた。





優花が結婚…





高校を卒業したら進学するにせよ社会人になるにせよ、中学生の頃に比べたらぐんと対等の関係になれる率がアップしている気がした。





今なら…今なら優花を…





『…先生、俺、建築士になりたい』



『は?』



『だから、建・築・士』



『大工の親方とかじゃなくて?』



『建・築・士』



『無理だ。』



頭ハゲちらかして強烈なミドルシュートを打ってきた。



『何でだよ! さっき不可能を可能にっつったの誰だよ!』



テーブルをぶっ叩いて立ち上がる俺を『まあまあ落ち着け』と諌めながら担任は続ける。



『“今は”無理なだけだから。頑張れば不可能は必ず可能にできる』



“今は”を強調する担任。



『ほんとかよ…』



ストンと脱力しながらソファーに座った。





< 86 / 208 >

この作品をシェア

pagetop