死を塗り替える者
真っ赤な水の中、錆びた鉄の臭いが鼻を刺激する。

何時からそこにあったのか、無数の手が俺の体中を触っている。

そして手は俺の肉を少しずつ千切り始めた。
痛い。
千切られた肉は血の海の中に紛れて見えなくなった。

血の海の腐った血液が、俺の血管の中を駆け巡るのも分かった。

こんな感覚は初めてなのに、何故かすんなりと痛い、理解する事が、出来た。

手は次々と痛い、痛、俺の肉を引き千切り、やがては俺の内臓へと手が届く。





やめろ、やめろ。
膵臓腎臓肝臓脾臓肺。あらゆる臓器が無理矢理持っていかれる。

痛い、痛い、怖い。

俺の、内臓、取らなイで。

俺の、中に、入ラないデ。

痛い…。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い赤い痛い辛い痛いゴメンなさいたい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…!





苦し、い…。



男がいた路地、その夥しい量の飛び散った血液の海。

その一カ所から「ゴポリ」と音を立てて気泡が立ち…弾けた。





「…処刑完了。あの世は多分良い所だぞ、安らかに逝け。」

ディアボロは死骸に目もくれず、その場を立ち去った。
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