死を塗り替える者
「あ、そう言えばリーズ。」
「何でしょう?」
「何でリーズって俺を冥王とディアボロの2つの呼び方するの?」
「あぁその事ですか。…何ででしょうね?」



理由は一応ある。
冥王として彼を見る時は冥王様。彼個体として見る時はディアボロ様。
一応そうやって自分の中で区別は付けているのだが…。

「まぁどうでも良いですね。」
「…まぁリーズがそう言うなら良いけど。あ、今日の仕事は先代達がどう仕事をしてたのか見せてくれないかな?」
「…ディアボロ様には記憶があるでしょう?」
「いやあるんだけど。客観的に見るとどんな感じに映るのか。ちょっと気になるから。」
「…まぁそう言う事なら。えーと…今日は…。」

胸元のポケットから先日と同じように一枚の紙を取り出す。
「えー…焔妖精の長を私怨により殺した竜人ハルベルト・イェーガーを至急処分せよ。…凄く面倒臭いんですが。」
「…珍しいね、妖精長を殺す竜人なんて。」
「過去にも2件ありましたがね。まぁ亜人の上級種程度ならあっという間です。行きましょうかディアボロ様。」
「期待してるよー。」



室内の一角に生まれた青白い影に、二人は飲み込まれるようにして消えていった。



聖霊界。
妖精、聖霊が住まうこの世界は基本的に他種族との交流を拒んでいる。
そんな世界に竜人が居るというのは、物凄く目立つ。

自分等以外の人型を探せば良いのだ。

「…ディアボロ様。」
「うん、拍子抜けだね。」



見つけた。

「では行って参ります。」
「此処で見とくね。」

ヒラヒラと手を振りながらディアボロ様は雑踏の中へ消えていった。さて。


「そこのナントカ・イェーガー。立ちなさい。」
「!?」

ビクッと肩を震わせて、少年はリーズの方を向いた。
「…どんな中年親父かと思ったら小便臭いガキでしたか。やれやれ。」
「なッ…何だよアンタ!イキナリ失礼だなぁ!」
「あ、申し遅れました。」

リーズは半歩下がり、スカートの裾を持ち上げて丁寧にお辞儀をした。見た目だけなら完全なメイドだ。

「私、冥王様のメイド、リーズ・スカーレット・クレセンドと申します。以後は有りませんがお見知りおきを。…では、死んで頂きます。」
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