秘密の鎖
私が心の中で綾香を罵っていると、夕月さんはふいにくしゃくしゃする手を止めた。
「今日どっか行こうか?」
「え?」
夕月さんの急な提案に驚いて顔を上げた。
「せっかくバイト休みだし」
笑って、私の鼻を軽くつまんだ。
「………」
ポッと顔が赤く染まるのが自分でわかった。
夕月さんとおでかけできるんだ。
うれしい!
「えっと、じゃあ」
ピリリリリー
「!」
携帯が私を呼んだ。
まったく!
こんなときに誰~?
仕方なく通話ボタンを押す。
「はい」
『あ、美緒ー』
無駄に明るい声が聞こえてきた。
この声は……
「莉沙」
りさ?と夕月さんが首をかしげる。
『ねー、今どこ?』
「どこって、家」
『今から行ってイイ?』
は!?と携帯を両手で持って耳に押しつけた。
今、なんて…
『最寄りのバス停どこ?そこで降りるから待っててー』
「ほんとに来るの!?」
もちろん、とか聞こえてくる携帯を耳から離して夕月さんを見上げた。
「友達?来るの?」
夕月さんの言葉にコクコクと頷いた。
「貸して」
そう言ってひょいっと私の手から携帯を奪い取り、ちょっと何か話してから私に返却した。