秘密の鎖

「あとで迎え行ってきて。下のバス停に来るから」


「え、いいの?」


私の友達が来ても?

ここは夕月さんの家なのに。


「いいよ。ビィの友達見てみたいし」


ほっ。よかった。

でも夕月さんとお出かけできなくなったのは残念…

まったく莉沙はタイミングが悪いんだから!


「それよりさ」


夕月さんが冷蔵庫に向かいながら言った。


「友達の前では『お兄ちゃん』って呼んでよ」


「うぇ!?」


ペットボトルに入った水を取り出しながらいたずらっ子みたいに笑う夕月さん。


そういえばそうか、莉沙にとっては夕月さんが私のお兄さんだし。
私がさん付けで呼んでたら変かも……


夕月さんはリビングに戻ってくると、腰に片手を当ててリビングを見回した。


「んー、面倒だけどリビング一応片付けとかないと」


「夕月さんの靴磨きセットが散らばってますもんね」


夕月さんはペットボトルを手に持ったまま、靴を取りながら私の方に顔を向けた。


「敬語もね」


あー、と私は口元を押さえた。

夕月さんはクスリと笑うと、


「そろそろ迎えに行ってたら」


と言って靴と共に私を玄関まで追いたてた。


< 102 / 230 >

この作品をシェア

pagetop