秘密の鎖
不思議に思いながらも、夕月さんに続いてリビングに入った。


でも、リビングに入るとさっき感じたのは間違いだったんだってくらい、夕月さんはいつも通りだった。


「今日は炭焼きにしてみたんだけど、どうかな」


そう言って夕月さんが私の目の前に差し出したものは、焼き鳥……だったらしいもの。


「炭焼きっていうか、炭そのものじゃん!なんでチャレンジしてみたの!?」


「ビィは帰るの遅くなるかな、と思って」


「そういうときは出前でもとって頂けたら有難いですっ」


その手があったか、と言って笑いながらポンと手を打つ夕月さんにため息をつく。


さすがに夕月さんが作った炭焼き(炭)を食べる気にはなれなかったので、部屋着に着替えてから作り直した。


「今度料理教えてよ」


夕月さんがそうめんを器から掬いとりながら言った。

今日は手軽にそうめんだ。
料理をするのが面倒なときにうってつけ。


「……私に教えられるか心配」


夕月さんの料理下手は治らない気が、する。

そうめんですら危ういかも。

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