秘密の鎖


お風呂からあがり、夕月さんがちゃーんと用意してくれていたパジャマを着た。

髪をタオルでわしゃわしゃやりながらリビングに行くと、夕月さんの姿はない。


「?」


ふと目にしたテーブルの上にはコーヒーと、それからカップの下敷きになってる小さなメモ。


私はメモを救出し、カサリと手に取った。


それは夕月さんからの置き手紙だった。

黒のボールペンで、急いだような筆跡で書いてある。


“ビィへ

ごめん


さっき電話で呼び出されたので、ちょっと行ってきます

お詫びにコーヒー淹れておきました

夕月”


メモを読み終えて、なんとなくほっとした。

今、夕月さんと顔をあわせるのはなんだか苦しい。


それにしても。


何に対するごめんで、
何に対するお詫びなのか。


私はソファに座り、カップを手に取った。

ほわりとした温かさがカップを通して私に伝わる。


……急いでいただろうに、わざわざコーヒー淹れてってくれたんだ。

お詫びに?



湯気もたってない、ちょっとぬるくなったコーヒー。


なんだかちょっぴり嬉しい、とにやけながらカップに口をつける。

一口飲んでから、ぶーっと吹き出した。



なにこれ!!



「甘!!」


これはコーヒーなのか、というくらい甘い。


砂糖入れすぎだよ……
確かに甘いの好きだけど!


夕月さんらしいけど、と甘いコーヒーに口をつけて、惜しむようにちょっとずつ飲んだ。









夕月さんが淹れてくれたコーヒーは


糖度50%の極甘コーヒーでした。



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