秘密の鎖

手を引っ込めて正解だ。


莉沙はお祈りみたいに手を組んで、キラキラした瞳でこちらを見てくる。


「お兄さんのことが心配なのね……」


何か、莉沙の頭の中でまた新しい妄想が始まってる気が……


「いや、あの」


「わかった!私も塾通う!」


「え?」


手を胸のまえでぐっと握りしめて、莉沙はキラキラしている。

もう私が何と言おうと莉沙の中では決定事項のようで、電話番号は~、っとCMを巻き戻している。


「美緒一人で塾に行かせるなんて心配だし!私も通えば絡まれてたら助けてあげられるし」


「……とか言って、本当は夕月さんに会いたいだけでしょー」


さも私のために、というように言う莉沙に白い目を向ける。


「やだ、それはついでよついで!」


そう言いながらも明らかに私の付き添いの方を“ついで”のような表情をしている。


何だかんだ言って結局莉沙はイケメン大好きだからな……


絢香も顔はカッコイイから、スパイ役も自分から買って出たんじゃないだろうか……


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