秘密の鎖

「夕月さん!!」


叫んだ。


みんな驚いて机の上に立っている私を見上げている。

女の子達に囲まれていたせいで見えなかった夕月さんとようやく目が合った。


なんでだか、久しぶりに会ったかのような錯覚に陥る。


「一緒に帰ろ!」


強気に言うつもりだったのに、泣きそうな声になってしまった。

カッコワルイ。


夕月さんはびっくりしたようで目を開いたが、すぐにいつもの優しい顔で微笑んだ。


「ああ、一緒に帰ろう。ちょっと待ってて」


そう言ってさっさと教材を片づけ始めた夕月さんに、我に返った女の子達がしがみつく。


「先生!なんであの子と一緒に帰るのよ?ずるい!」


「そうだよ!なんであの子だけ!?私とも帰って!」


案の定、女の子達はわーわーと喚いて夕月さんに講義する。

突然現れたヤツが獲物を攫っていくのだから面白くないに決まっている。


「早く下りて!」


夕月さんが責められている光景をぼさっと眺めていると、莉沙に机から引きずり下ろされた。


夕月さんは困ってるんじゃないかな。

助けるどころか…火に油を注ぐってこういうこと?

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