秘密の鎖

でも、夕月さんは平気な顔で次々と教材を鞄に詰めている。

いくら周りでぴゃーすか騒ごうとも、どこ吹く風でパチンと鞄の留め具をかけた。



そうだよ、こういう人だったよ、夕月さんって。



私が心配するだけ無駄だったようで、女の子達を掻き分けてあっさりと私の隣に立った。


「さ、帰ろ」


ひいぃぃっ…!

夕月さんの背後から女の子達の殺気が私を狙ってる感がひしひしと伝わってくるんですけど!


「あ、あの、私やっぱり…」


逃げ腰で鞄を胸に抱えてズリズリと後退りすると、夕月さんは不思議そうに私を覗き込んできた。



やめてよ――っ!



「だからっ、」

「宮島先生!」


あわあわとしている私の言葉を遮って、女の子の一人が夕月さんの腕を捕まえた。


「何?」


夕月さんは心なしか不愉快そうだ。

笑顔がひきつってるけど、きっと女の子は気づいていない。

私は汗をタラタラ流しながら事を見守った。


「私帰ろっと」


莉沙は自分の鞄をひょいと掴んでスッタスッタと教室を出ていってしまった。


薄情者!


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