秘密の鎖
「誰か一人を特別扱いするなんて認められません!」
莉沙が出ていくのを恨めしげに睨んでいると女の子がそう言って、私ははっと視線を戻した。
夕月さんは、というとぽかんとしている。
ハテナマークが浮かんでいるのが目に見える。
「だって、先生でしょう?先生は生徒に平等にあるべきじゃないですか?」
女の子は夕月さんを説得するような姿勢だ。
強気にそう言ったあと、ふふん、とでも言いそうな顔で私を見てきて、言い返せない私はすごすごと夕月さんの後ろに隠れた。
他の子達もそうだそうだとその子を押してきて、居心地悪いことこの上ない。
不安げに夕月さんを見上げると、少し考えこむように口元に手をあてていたが、頭のあたりにピコンッと電球が灯った(気がした)。
「確かにそうだね。でも俺はただのバイトだし、それに――」
「うわわっ」
夕月さんはひょいと私を引き寄せ、見せつけるようにくっついた。
「大切な子と帰ったらいけないなんて、耐えられない」