秘密の鎖
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「帰り、カフェにでも寄ってかない?」


「寄ってかない」


綾香が頬杖をついて、いつものスマイルで誘ってきたのを一蹴する。



足まで組んでるし。

しかも長い。

黒い制服が長さを強調してる気がする。

なんかムカつく!



夕月さんの連続3コマの授業が終わって、次の授業が始まるのを待っているこの時間。

特にすることもなくて暇な私たちは、各々好き勝手に机に張り付いていた。


綾香は先に述べたとおりだし、莉沙は完全に顔を伏せて寝ている。


「プリンパフェ食べたい。イチゴが乗ってるやつ」


なんていう寝言がときどき聞こえてくる。

しかも全部食べ物(それもデザート)関係の。


そして私は


さっき夕月さんに出された課題プリントをシャーペン片手にせっせと解いていた。


右隣にいる綾香はなんとも不思議そうに見てくる。


「そんなの家でやっちゃえばいいのに。わざわざ休憩時間にやんなくてもよくない?」


私はちらりと目線だけ綾香に向けて、そしてぷいと顔を背けた。

プリントを心持ち綾香から遠ざけて机の左端に寄せる。


「いいの。やりたいからやってるの」


「ふぅん?」


綾香は理解できない、というように眉を寄せた。


別にいいもん。


どうして私がこんなにプリントを一生懸命やってるかなんて理解してもらわなくていい。

むしろ、理解されたくない。


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