秘密の鎖

と、思ったら。


「あ、わかった。あいつが英語担当だからだ。だから褒めてもらいたくてやってんだろ。ね、違う?」


「………」


ニコニコと楽しそうに人差し指をこちらに向けながら言ってくる綾香が憎たらしい。



…そうだよ!

その通りですとも!


私がムダに英語に気合いが入ってるのは、そういう理由です!



まだ人差し指を向けて笑っている綾香をギロリと睨む。

こころさんなら間違いなくその指を攻撃しにかかるハズ。


それでも素直に言いたくない私は


「ちっがうし」


と、とりあえず言っておく。

だけど綾香はますます楽しそうに口を三日月形にする。


「図星だ」


ケラケラと綾香が笑ってきて、私はシャーペンを動かす手をぴたりと止めた。


何よ何よ、勘がいい人なんかキライ!


むぅっとしながらプリントから顔をあげ、綾香をひと睨みする。


「悪いかしら?」


「別に。悪くないけど」


綾香の、読みが当たって満足げな顔が気にくわない。

私はもうどうでもよくなってシャーペンを放り出した。

コロコロと机の上を転がっていく。


やめやめ。

邪魔者(綾香)がいたんじゃ集中して出来ないもん。

仕方ないから家帰ってやろ。


綾香はピタリと笑うのをやめて、まるで子犬がきょとんとこちらを見るような顔をして見つめてくる。


何か言いたいなら、言えばいいのに。


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