秘密の鎖

「何?」


いい加減鬱陶しくなって、ひきぎみに尋ねた。


「いや、意外とあっさりやめちゃうんだなーと思って。案外あいつへの気持ちもそんなもんなんじゃないの?」


「はぁ?」


相変わらず子犬みたいな顔をしてそんなことを言ってくる綾香に、私は目をまんまるくした。



そんなわけないでしょ!


プリント解くのやめちゃったからって、夕月さんへの気持ちも薄くなった、なんて


プリント=夕月さんじゃないんだから!



プリントを鞄にしまいつつチラリと綾香を見ると、意味不明な笑顔を浮かべていた。


「冗談だよ。今のはね、俺の願望」


言ったあとに、今度は真顔で私をじーっと見つめてきた。


いきなりのことに私はどうしたらいいかわからずに視線をあちこち動かして、綾香の視線から逃げまわった。

だけどあまりにも遠慮ない視線に耐えられなくなって、バッと自分の目を両手で覆った。


「わ、わかったからそれやめて!」


まだ自分を見ているかもしれない綾香に頼むと、クスクスと笑うのが聞こえて、そっと指の隙間から綾香を見ると。


笑いながら、目尻を指で拭う綾香が見えた。


「あー面白い」


………、


かっ、からかわれてた!?


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