秘密の鎖

「それでね、彼ったらひどいのよ」


リビングから場所を移動して、私たちはなぜか夕月さんの部屋でお茶していた。


夕月さんが持ってきたフルーツケーキにグサグサとフォークを差しながら、こころさんは旦那さんに対する文句を並べる。


「お義母様のために私が選んだハンカチ、自分が気に入ったからって同じものを買っちゃったんだから!私を差し置いてお義母様とお揃いよ、許せない!」


「………」


「……姉さんはあの人とそのお義母様、どっちが好きなわけ」


夕月さんの言うあの人っていうのはこころさんの旦那さんのことだ。


「もちろん、お義母様よ。私はお義母様に惚れ込んで、彼と結婚したんだから」


何それ―――!!


なんてツッコミたい。
無理だけど。


こころさんはたまに冗談なのか本気なのかわからないときがある。

それはまた夕月さんも然りなんだけど、こころさんのこれは本気かもしれない。


夕月さんは呆れた表情で紅茶に口をつけている。

それを見たこころさんがまたむぅっと口を尖らせた。


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