秘密の鎖
「うあっちち!!」
考え事をしながら紅茶をカップに注いでいたものだから、うっかり熱いお茶をこぼしてしまった。
ああもう、最悪。
ふーふーと指先に息を吹きかけながらトレーにケーキと紅茶を並べ、今度は慎重に運んだ。
なんとかこぼさず、部屋の前までたどり着く。
「そろそろ家に帰してあげたらどうなの?」
夕月さんの部屋の前に立ったとき、こころさんのそんな言葉が聞こえてきた。
私は思わずドアに伸ばしかけていた手を引っ込めた。
「まさかいつまでも預かっているつもりじゃないでしょうに。美緒ちゃんが可愛いそうよ」
え、何?
私の話?
私はトレーを持ったまま、どうしたらいいかわからず部屋の前で硬直していた。
このままここで聞いてたら、盗み聞きになっちゃう?
「ずっと預かるわけないだろ」
「じゃあいつまでここにいさせるつもりなのよ?」
「それはわからない」
「じゃあ私が決めてあげる。あんたの身勝手に、美緒ちゃんを巻き込まないで」