秘密の鎖

「うあっちち!!」


考え事をしながら紅茶をカップに注いでいたものだから、うっかり熱いお茶をこぼしてしまった。


ああもう、最悪。


ふーふーと指先に息を吹きかけながらトレーにケーキと紅茶を並べ、今度は慎重に運んだ。

なんとかこぼさず、部屋の前までたどり着く。


「そろそろ家に帰してあげたらどうなの?」


夕月さんの部屋の前に立ったとき、こころさんのそんな言葉が聞こえてきた。

私は思わずドアに伸ばしかけていた手を引っ込めた。


「まさかいつまでも預かっているつもりじゃないでしょうに。美緒ちゃんが可愛いそうよ」



え、何?


私の話?



私はトレーを持ったまま、どうしたらいいかわからず部屋の前で硬直していた。



このままここで聞いてたら、盗み聞きになっちゃう?



「ずっと預かるわけないだろ」


「じゃあいつまでここにいさせるつもりなのよ?」


「それはわからない」


「じゃあ私が決めてあげる。あんたの身勝手に、美緒ちゃんを巻き込まないで」


< 174 / 230 >

この作品をシェア

pagetop