秘密の鎖

「変な顔してる」


「…夕月さん」


私が眉を下げて見上げてるからそう言ってるんだろう。


なんかわからないけど、泣きそうだ。


そう思った瞬間、夕月さんが私の頭をわしゃわしゃと掻き乱した。

わっ、と私は少し前にバランスを崩す。


「サボったなー」


「え、えへ」


ボサボサになった頭をそのままに、ごまかし笑いをするとデコピンされた。


痛い。
デコピンって痛い。


「ビィが突然いなくなったから、こっちは心配してたのになぁ」



心配……してくれてたんだ。



ちょっと嬉しい、なんて不謹慎なことを思っていると、目の前にすっと手が差し出された。


「なに、これ」


眉を寄せて差し出された手を見ると、また笑われた。


「変な顔」


「年頃の乙女にむかってさっきからなんてことを~っ」


むぅっと口を尖らせると、夕月さんはうそうそ、と言った。


「家帰ろ。ここ暑いし、熱中症になりそう」


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