秘密の鎖

確かにここは暑い。


今は陽が真上で私が座っているベンチはまったく日陰じゃないから、容赦なく日差しが照りつけてくる。


でも、それどころじゃなくて暑いなんて思ってなかった。

そういえば、暑い!


「でも帰るって……」


夕月さんの手を借りて、のっそりと立ち上がった。


「塾は?夕月さん、授業あるんじゃないの?」


私はともかく、夕月さんがサボったりなんかしたら授業がなくなっちゃう。

生徒たちは困るはずだ!(普通は喜ぶけど、夕月さんの授業に関してはみんな積極的参加)


「あー、大丈夫。午後からの授業、代わってもらったから」


「え!?なんで??」


夕月さんの授業を受けられると思っていた女子の皆さんの嘆きが聞こえてきそう。

ブーイングの嵐に襲われる、代わりの人がかわいそう……


だからこそ、なんで!?


「なんでって、わからないかな」


「?」


「ビィがいないから、探しに行くためだよ。でも見つかったから良かった良かった」


「………」


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