秘密の鎖
マンションに戻ると、見慣れない人影がドアの前にいた。
毛先をふわふわと巻いた髪、清楚なワンピースが似合うお嬢様……
「ららさん…?」
私がぽつりと呟くと、誰だか気づいていなかったらしい夕月さんはえ、と急いでそちらに視線を向けた。
同時に、気づいたららさんがドアに預けていた体を起こしてこちらに向けた。
「ああ、夕月。どこに行ってたの?ずっと待ってたのよ」
ふわりと笑った笑顔は天使みたい。
ま、負けた……
当たり前だけど。
「待ってたって…?」
夕月さんは不思議そうな顔つきで、ららさんを見ている。
ららさんは嬉しそうに頷いた。
「そうよ。大事な用事。お母様からのお手紙を預かってきたの」
ゴソゴソとトートバッグの中を漁って、黄みがかった封筒に入った手紙を取り出した。
笑顔のまま夕月さんに両手で差し出して、首をかくんと傾けているのを見てちょっとゾゾッとしちゃった、なんてことは失礼なので黙っておこう。
夕月さんは手紙に釘付けになっていたせいでららさんの行動には動じず、ただ黙って手紙を受け取った。