秘密の鎖

夕月さんは夕飯の時間になっても、部屋から出てこなかった。


ずらりと並べた二人分の食事の前で頬杖をつきながら、はぁ、とため息をつく。



なんで出てこないの?

今日はハンバーグなんだよ?

私の、愛情、たっぷり、の!(一方的)



いい匂いでおびきだそうと、夕月さんの部屋の前にフライパンごとハンバーグを持っていってパタパタうちわで仰いでみたけど、まったく効果がなかった。

さすがにそれでひょいひょい出てくるほど夕月さんはバカではない。



それにしても、いくらなんでももう出てきてくれても……



夕月さんの部屋をちらりと見やってから、今度はがくんとうなだれた。




……よっぽど、なんだろうな。



あの手紙が、ものすごく夕月さんにとって重要な意味を持ってるんだ。


いい意味なのか悪い意味なのかわからないけど。





なんだか寂しい。

何も知らない私が
何もわからない私が

何も言ってくれない夕月さんが……



「もう、知らない」


ふてくされて、私はテーブルの上に突っ伏した。



食べないから!


夕月さんが出てくるまで何が何でも食べないから!


私が飢え死にしちゃったら夕月さんのせいだから!


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