秘密の鎖

「行こうと思う。いくら長い間会ってなかったとしても、一応親だし」


うつむきかけていた私は顔をあげて、そうですね、と頷いた。


――行ってあげてください。きっと夕月さんにとても会いたいんだと思います



それを口にすることはできなかった。




離れていても親子。

確かに血が繋がった存在。



「だからビィ」



夕月さんを見上げた。

睫毛の間から茶色がかった瞳が覗く。





「お別れだ」




喉元にこみ上げる苦しいものを、必死で飲み込んだ。


眉が下がりそうになるのをこらえて無理矢理笑顔をつくる。



嫌だ。


本当は、すごく嫌……



「久しぶりにご両親に会えるんですね…、良かった」



それだけ言うのが精一杯で、くるりと背を向けて部屋に逃げ込んだ。


ドアに背を預け、涙がこぼれそうになるのを必死に抑え込む。






泣いたらだめ。

泣くのはおかしいでしょ。


夕月さんがお父さんとお母さんに再会できる、素敵な話なんだから……






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