秘密の鎖
本当は塾なんか休んでベッドに臥せっていたいくらい落ち込んでいたけど、夕月さんの手前いつも通り塾に向かった。
「どーしちゃったの、なんかあった?」
ベッド、ではなく机に伏せっている私に、莉沙が怪訝そうに眉を寄せた。
今日もお化粧ばっちり。
マスカラ塗りたての睫毛がぱちぱちと揺れる。
その隣で綾香も眠そうに立って私を見下ろしている。
「ん、まぁね」
私はちょっとだけ体を起こして、だるそうに手を振ってみせた。
すると莉沙の眉毛がくいっと上がった。
当たり前か。
「まぁねじゃないよ!一体どうしたのって聞いてんの!」
「まあまあ。勘弁してやってよ、こいつバカなんだから」
綾香の余計な一言にムッとしながら睨みつける。
ほんと一言多い!!
「夕月さんとお別れなの。夏休みが終わったら、私は家に戻んなきゃいけなくなったの!」
ほぼ八つ当たりぎみに告げると、綾香はちょっと驚いた顔をして、莉沙は不思議そうな顔をした。
「お別れ?何?兄妹でしょ?」
私ははっと口元を押さえた。
そういえば、莉沙は知らないんだった。
私と夕月さんのほんとのカンケー。
どどどどーしよう。