秘密の鎖
驚いて振り返ると、私の腕を掴んでいる女の人の姿が目に入った。
「あ……」
私を鋭く睨みつけてくるのは、いつものふわふわした雰囲気がないららさんだった。
ららさんはしばらく無言で睨んだあと、来て、と呟くように言って私を引っ張って歩きだした。
抵抗することもできないまま、ららさんに大人しく着いていく。
連れてこられたのは塾をサボったときに来た公園だった。
公園に香る夏の夜の匂いがふわりと鼻先を掠めた。
「あ、の~…?」
私をベンチに座らせたまま、無言で俯いているららさんを控えめに覗き込んだ。
瞬間、ららさんはぱっと顔をあげて私の手首を取り上げる。
「あなたの……あなたのせいなのよ!」
睨みつけてくる潤んだ瞳 に戸惑いながら、私はわけがわからず目を泳がせた。
私の、せい?
「夕月のことよ。夕月がカナダに行っちゃうのは、あなたが側にいるせいなの」
「私が側に……?」
「そうよ。あなたがいなければ、わたしが……!」
ららさんはそこで言葉を詰まらせ、悲しそうに頭を下げた。
「わたしが夕月を支えていくはずだったのに……」