秘密の鎖
「………」
私は何も言えないまま、ららさんの悲しみに満ちた顔を見つめるしかなかった。
潤んだ瞳からとうとうこぼれ落ちたしずくが、ららさんのスカートに染みをつくる。
「わたしが……、わたし、ずっと好きだったのよ。夕月は知らないかもしれないけど、わたしはずっと夕月だけを見てたの」
私の手首から離れたららさんの手は、膝の上できゅっと拳をつくった。
「夕月とは幼なじみで………わたしは特別だって思ってた。夕月の隣にいるのはずっとずっとわたしだって」
ずっと側にいると思っていた相手が離れていく。
手の届かないところに行ってしまう……
そして自分の知らない女の子と結ばれる。
それが嫌で嫌で、ららさんは夕月さんの近くにいようと必死だったと言う。
「でも……、わたし嫌われちゃった。夕月はいつのまにかわたしを名前で呼ばなくなってしまっていたし」
そして、初めてマンションで私と出会ったとき、夕月さんがいないのを知っていたうえで私と接触したのだと言う。
ホテルで食事していたときも母親との約束なんて嘘だったと。
「あなたのせいで、わたしは嫌な女になったのよ。だから夕月はわたしから離れたいの。カナダに逃げるつもりなんだわ」