秘密の鎖

ららさんはさびしそうに眉を下げ、自嘲ぎみに笑った。

まるく白い頬に流れた涙のあとが、月の光に照らされている。


その姿がいたたまれず、私はゆっくり口を開いた。


「…夕月さんがカナダに行くことと、それは関係ないと思います」


「えっ」


私の言葉に驚いて顔をあげ、何を言っているんだとでも言いたげに眉を顰めた。


「夕月さんはただ純粋に父親の最期のときを一緒に過ごそうと考えているだけです。ららさんは、想いが叶わないのを私のせいにしたいだけ。そして自分を責めたいだけ。違いますか?」


ららさんは目を見開いたまま、何も言わずに私を見つめた。

色素の薄い瞳にまじめな顔をした私が映っている。


「たぶん夕月さんはららさんのこと嫌いなんかじゃありませんよ」


「そんなわけないじゃない……」


「ほんとに嫌いだったら、あからさまに避けたり、機嫌が悪くなると思います。でも夕月さんは、ららさんの話題をするとき懐かしそうに笑ってました」


いつだって、嫌な顔はしてなかった。


仕方ないやつだなぁ、とか親しみのある感じだったように思う。


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