秘密の鎖




「……話したい、夕月と…」



ららさんはぽつりとこぼし、月を見上げた。




憂いのあるららさんの横顔は、儚げでやっぱり綺麗。

夜の風が髪を揺らして、美しさをいっそう引き立てている。



私はこくりと頷き、ららさんの手をそっと取った。


「行きましょう、ららさん。カナダに行っちゃったら、しばらく話せなくなりますよ」



そう、ららさんはしばらく。



だけど私は……




お姫様のようにららさんはゆっくりと立ち上がり、ふわりとした笑顔を見せた。


いつものららさんのように。


「ええ、ありがとう。美緒ちゃん」


「…いいえ」


にこっと笑って、ららさんと並んで歩き出した。



心の中のどこかで


二人を会わせるのは嫌だと、




そう感じた自分が嫌だった。



< 195 / 230 >

この作品をシェア

pagetop