秘密の鎖
「なかなか帰ってこないから心配したよ。警察にでも連絡しようかと…」
しなくて正解です。
夕月さんに促されながら部屋に入り、恐る恐る奥を覗く。
「あ、の~、ららさんは……」
「ららなら帰ったよ。2時間くらい前」
『らら』になってる…
ズキ、と胸が痛んだ。
呼び方が変わったってことは、やっぱり二人はうまくいったんだ……
「お腹すいてない?スープあるよ。飲む?」
夕月さんがお鍋の中を覗き込みながら言った。
私はいらない、と首を振ると俯いた。
スープ。
夕月さんが作れるわけないし、きっとららさんが作って帰ったんだ。
これしか私のやれることはなかったのに……
俯いている私に夕月さんが体を向けたのがわかった。
反射的にビクンと反応してしまう。
「話があるんだ」
私の心臓は大きく音をたてた。
嫌だ。
聞きたくない。
夕月さんとららさんの交際報告でしょ?
そんなの聞くくらいだったら私……