秘密の鎖

「お姉ちゃん!」


玄関のドアをあけると、優也が勢いよく飛びついてきた。

いきなりのことによろめいて、
なんとか体勢を戻した。


「優也?」


いつもだったらこんなことは絶対にしない優也が、私にぎゅっと腕を回している。


「どうしたの」


優也の肩が上下に揺れた。


…泣いてるんだ。



「お姉ちゃん、行っちゃやだよ…」


涙でいっぱいの大きな瞳をこちらに向けて訴えている。


「お、お父さんも…いなくなっちゃっ、たのに…お姉ちゃんまで、い、いなくなったら、僕いやだ…」


胸が痛い。

かわいい優也を置いて、私は出ていかなくちゃいけないんだ…

私は優也の小さな頭を抱えこんで床に膝をついた。


「優也、ごめんね」

「……」


優也は黙って、これ以上涙を流さないように必死にこらえている。

お母さんに、泣いてることがバレないように。

気遣いだけは一人前。

でも、まだまだ小さな、私のかわいい弟だった。


「お姉ちゃんはお母さんとお父さんの秘密が知りたいの」


優也の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。


「知ってはいけないのかも。それでも、知りたい」


優也は黙って頷いた。


「ごめんね」


このモヤモヤを抱えたままなのは嫌。



真実を知りたい。


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