秘密の鎖

彼の前にも、私の前にあるものと同じスープが湯気をたてている。


「どうぞ遠慮せずに」


そうにこっと笑って、夕月さんはスープを口にした。


遠慮せずにと言われましても、怖いもんは怖いのですヨ!


夕月さんの様子をちらりと伺うと、顔をしかめることも吐き出すこともなく飲んでいる。


自分で作ったから平気なのかもしれないけど……



ごくりと唾を飲んでスープを見つめた。


せっかく夕月さんが作ってくれたんだし、飲まなきゃ失礼だよね。


でも…でも……!


ああーっもう飲んじゃえ!!



ぱく、とスプーンを口に突っ込んだと同時に、夕月さんが顔をあげた。

心配そうに私を見ている。


「………」


スプーンをくわえたまま固まった私に、夕月さんはますます心配そうに顔を覗き込んできた。


「し……」


「し?」


やっとスプーンを離して、夕月さんに視線を向けた。


「信じられない、けど……おいしい」


そう言った途端、夕月さんが嬉しそうに笑ったので、なんとなく恥ずかしくなって慌ててスープに視線を下げた。


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