秘密の鎖

秘密


朝5時。

私は荷物をまとめて玄関に立った。

なんだってこんなに早く出ないといけないんだろうと思ったけど、今の私には好都合だった。

この時間帯なら
お母さんも起きてないから会わなくて済む。
出発の時間も伝えてないから知らないはずだし。

というのも、
私は昨日家に帰ってから一言もお母さんと口を聞いていない。

別に話したくないわけじゃないけど

どちらともなく避けている感じがした。


「いってきます」


そう小さく呟いてから、重たいドアをあけた。



家の前に、昨日の白い車が停まっていた。

私が家から出てきたのに気づくと、車から降りて私の手から荷物を取った。


「早起きできないかと思ったのに」


くすりと笑って荷物を後部席に乗せると、助手席のドアを開けてくれた。

私は黙って乗り込む。

私がシートベルトに手をかけたのを確認してから、助手席のドアを閉めて運転席に乗り込んだ。


車がゆっくりと発進する。
私は相変わらず黙りこんで、窓の外を眺めていた。

並木が流れるように消えていく。

どこ、行くのかな…
家から遠いのかな。
お母さんと優也がいない生活なんて…
これから私は


「名前何ていうの?」


いきなりそう聞かれてドキッ!とした。


なんてふい打ち!!


「し、知らないの?」


「うん」


てっきりお母さんからもう聞いてるものだと思ってた……
ていうか、預かるって言ってるくらいだから知ってて当然だと思ってたのに!


この人よくわかんない……


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