秘密の鎖

なんで、バレちゃうんだろう。

私は必死で隠してたつもりなのに。


「な、泣いてほしいの？」


それでもなお強がろうとして言ったのに、声が震えてしまった。

綾香はくしゃくしゃやる手を止めてにこっと笑う。


「貸してあげるよ、ほら」


そう言って腕を広げた。


胸を貸してあげる、ってことなんだろう。

でもそんなの無理……


フルフルと首を振った。


「ば、ばかじゃないの…っ」


くん、と腕を引っ張られて、気づいたときには綾香の腕の中にいた。


「や、やめて…」


焦って逃げ出そうとする私の頭を抱えこみ、胸に押し付けた。


「ダメ。泣くまで離してやんない」


私の声はすでに涙声だというのに、綾香がそんなことを言うから。


「っ」


押さえ込んでいたものが溢れ出して決壊した。


「……夕月さんっ」


「よしよし」


嗚咽をあげる私の背中を、綾香が撫でてくれた。




ほんとは
ほんとは


離れたくなかった


ちょっとでも会えなくなるんて
さびしくてたまらない


早く帰ってきてよ



夕月さん……