秘密の鎖
ひとしきり泣いたあと、ようやく落ち着いた私はそっと綾香から離れた。
「あ、ありがとっ。ごめんね」
気まずくて目を逸らしながら言うと、綾香はこくりと頷いた。
「ん、いいよ。これで俺に惚れてくれんなら」
………、
はあ?
「敵は海の向こうだし、木原が俺の手に落ちるのも時間の問題」
「私は夕月さん一筋なの!」
「言ってれば。俺に惚れるに一票」
「惚れないに二票!」
「公平を期して一人一票でーす」
「んぐぐ」
「あたしが綾香くんに惚れるに一票!」
ん?
と自分たちのものではない声に綾香と二人して振り向くと、莉沙がひょいと物陰から姿を現した。
「り、莉沙!?いつからいたの?」
「最初からー」
私はかぽーんと口を開けた。
さ、さ、最初から!?
ってことは、今までの全部見られてた!?
「いたなら早く出て来てよっ」
「綾香くん格好良かったー!ほんとに惚れちゃいそうだよ~」
聞いてないし!
莉沙は私のことなんかまるきり無視して、綾香に言い寄っている。
人の恥ずかしいとこ見といてヒドい。