秘密の鎖
不思議に思っていた。
あの日ららさんは夕月さんに想いを告げに行ったはずで。
それなのに私は夕月さんから思いもよらない告白を聞くことになった。
ららさんは一体……
「わたしね、ちゃんと伝えたよ」
「え……」
「結果は見えてたけど」
くす、とららさんが笑う。
「せめてららって呼んでほしいって言ったの。未練がましいけど、これだけは譲れなくて」
夕月さんとは幼なじみで。
他人行儀に呼ばれると腹が立つの、と眉を下げた。
「実はね、わたし夕月の背中を押してやったの。あなたは奥手だしわかりにくいから、逃げられちゃうわよって」
ぺろりと舌を出すららさんに、私は目を見開いた。
ららさんは夕月さんの気持ちに気づいてて……
「ららさん……」
あの日、夕月さんがとった行動の裏にあったのは
「気にしないでね。わたし美緒ちゃん結構好きよ」
そう言ってららさんは立ち上がり、綺麗な仕草で鞄を肩にかけた。
「そのかわり、コーヒー代は美緒ちゃん持ちね。ふふ」
じゃあまたね、と言って可愛らしく手を振ると、マスターに頭を下げて喫茶店を出ていった。