秘密の鎖
「…木原美緒です」
ボソッと呟いてあげた。
聞こえるか聞こえないかってくらいに。
でも、彼はちゃんと拾いあげた。
「みおちゃんね。漢字はどう書くの」
か、漢字?
そんなことまで聞かれたのは初めてだ。
紙に名前を書いてもらうときとかは別として。
「美しいに、玉の緒の緒」
「じゃあ、ビィって呼ぼう」
「え!?」
ビィって…
『美』からきた?
ふつうここは
『みお』からとってミィとかじゃないの??
「いいね、ビィ。ビー玉みたいでかわいいかわいい」
ひとりで納得しちゃってるし、私の呼び名はビィで決定したみたい。
ビー玉のどこがかわいいんだろう。
「あなたは」
「ん?」
「あなたの名前は?」
そう、私もこの人の名前を知らないんだ。
うっかりしてた。
「俺は宮島夕月」
「ゆづき…かわった名前だね」
「よく言われる」
そう言って笑った横顔に、うっかりみとれてしまうところだった。
あぶないあぶない…