秘密の鎖
「あ、明日彼女連れてくるけどいいよね?」
優也がタマネギを切りながら、当たり前のように言ってきた。
…………。
私は今、そのことであなたに悪態ついてたとこです、わかってる?
私は大根をゴリゴリすりおろしながら、肩をすくめてみせた。
「いいわよいーわよ。せいぜいいちゃついてちょうだい」
「なにオバサンみたいな……」
優也は呆れたみたいな顔して、私を横目で見ている。
集中してタマネギ切りなさい、タマネギを。
「妬むんなら、彼氏つくりなよ」
お前はまた―――!!
おろしがねをガツンガツンまな板の角にぶつけても、優也は私の怒りに気づいていないようで。
「友達の兄貴でも紹介してあげようか?」
挙げ句にはこんなことまで言い出す始末。
私をバカにしてるんでしょ?
そうなんでしょ?
「あんたに世話になるほど困ってませんから」
むすっと眉を寄せつつ、すった大根を器に移して 魚を焼いているグリルをのぞきこむ。
む、いい焼き加減。
ピンポーン
「あ、俺いくよ」
インターホンが鳴って、優也が手を拭きながら玄関に向かった。
ようやく私の虫のいどころが悪いことに気づいたらしい。