秘密の鎖
「どうしたの、早く入りなよ」
玄関でつっ立っている私に、夕月さんは不思議そうに声をかけた。
「は、はぁ…」
だって、こんな高級マンション入ったことないんだもん!
しかも一番高そうな部屋…
私は恐る恐る足を踏み入れた。
や、やった。
私でも入れた!
「ぷっ」
夕月さんは吹き出して、くすくす笑っていた。
「何その顔」
顔!?
私は急いで壁に掛けてあった鏡を確認した。
写ったのは、超真剣な顔。
恥ずかしい!
「まぁまぁ、それより、ここがビィの部屋ね」
そう言ってリビングにつながるドアの隣のドアを開けた。
私は俄然元気が出て、パタパタと駆けよった。
見ると、ベッドもカーペットも、パステルカラーでまとめられたかわいい女のコっぽい部屋。
思わず夕月さんを見上げた。
「これ、どうしたんですか?」
夕月さんはニコニコしている。
「気に入った?」
「うん」
夕月さんは壁に肘をついて部屋を見回した。
「ここは姉さんの部屋だったんだよ」
…お姉さん?
「今は結婚して、ここにはもういないけど。前はこの部屋を使ってたんだよ。あ、掃除はしたから安心して」