秘密の鎖
夕月さんは静かに頷いた。
ショック。
あの、お母さんが。
まさか…
「そんなの、信じないから。お母さんがそんなことするわけない!」
私はグラスをテーブルに叩きつけるように置いて立ち上がった。
私を見上げる夕月さんの顔は、真面目だ。
「ほんとなんだよ、ビィ」
夕月さんの瞳が私を捉える。
彼の真剣な瞳は、確かに
嘘をついてない、と思った。
「………」
私は床にへたりこんでしまった。
そんなこと、考えたこともなかった。
今も正直、話を整理できてない。
でも、私は
私の体は
私の心は
悲しみを感じていた。
お父さん
お母さん
嘘だよね
薄いブルーのカーペットにぽとりと水滴が落ちて染みを作った。
そのとき、温かくて大きな腕が私を包んだ。
「ビィごめん。でも、俺たちの存在をどんな形でもいいから知って欲しかったんだ……」
私はただ泣いた。
なにが悲しいのかわからなかった。
体と心が泣きたいというのにまかせて、
夕月さんの腕の中で泣き続けた。