秘密の鎖

「ただいまー」


玄関からやる気のない声が聞こえてきた。


「あ、お父さん帰ってきたわ。」


お母さんがいそいそと玄関にむかう。

優也と私は顔を見合わせて、仕方なく手を下ろした。


高校生にもなって掴み合いだなんて…


パスタの残りをつっつきまわしていると、
お父さんがダイニングに入ってきた。


「ただいま、美緒、優也」


「おかえりー」


「ハイハイオカエリナサイ」


「美緒、なんだその言い方は。お父さん悲しいぞ」


ネクタイをゆるめながら、悲しそうな顔を作って笑っている。

お母さんは笑いながらお父さんの分のパスタをテーブルに置いた。


いつもの夕食の風景。

私は、これがずっと続くんだと思ってた。

それが当たり前だと。






なのに、なんで。


なんで…



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