秘密の鎖

ふわりと柔らかな薔薇の香りがした。

目の前にはサラサラの綺麗な髪。

細くて優しい腕が私をしっかりと抱きしめる。


「美緒ちゃん」


こころさん…


こころさんも父親を亡くした。

よく考えて見れば、
こころさんは私よりももっとお父さんと話せなかった。

話したくても
話せなかったかもしれないのに…


胸が痛い


こんな優しい人から
お父さんを奪ってしまった

親というものを
独り占めしてしまった気がした



こころさん



どうか
私を許して


お母さんを
許して


お父さんを
許して……



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