秘密の鎖

しばらくして夕月さんが私の部屋のドアをノックした。


「はーい」


私が返事をするとすぐにドアが開いて夕月さんの姿が見えた。


…スーツ!?


夕月さんはきちんとネクタイを締めていた。

その格好に、夕月さんが初めて私の家を訪ねてきた日を思い出す。


「俺は仕事に行くけど、出掛けるときは戸締まり気をつけて――――って、…何?」

「え!」


いつの間にか思いっきり見つめちゃってたらしい。


「なんでもないっ!」


手近にあったクッションを夕月さんめがけて投げつけた。


命中。
見事命中。

夕月さんの顔面に。


夕月さんはわけがわからないという顔して、クッションをそっと私に投げ返した。


「ビィはどうやら機嫌が悪いらしい」


かわいそうな夕月さんはそう言って仕事に行ってしまった。


…だって恥ずかしかったんだもん!

見とれてたなんて絶対気づかれたくないし!


一人で部屋で転がりまわっていると、
ケータイが鳴った。


誰だろ?


画面を確認すると、莉沙からだった。


「はい」


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