秘密の鎖
いつもの通り、
学校から出て商店街へ向かう途中。
莉沙が突然あれっ、と立ち止まった。
「どうしたの?」
「ほら、あの人」
莉沙の目線をたどると、私は目を丸くした。
「あっ、昨日の…」
道路の向こう側。
そこには、あの人がいた。
誰もが目を奪われる、素敵な人が。
横断歩道でこちらに渡ってくると、私たちの数歩先を軽やかに歩いていった。
「この辺に住んでるのかな」
「さあ、どうだろ」
「つけてみるー?」
「なにいってんのー」
なんて言いあっているときだった。
カバンの中のケータイが、ぶるると震えて着信を知らせた。
急いで取り出して画面を確認する。
お母さんだ。
「もしもし」
季節は夏。
ジリジリと容赦なく照りつけてくる日差し。
夏休みの、始まりとともに……