秘密の鎖
「ビィ!」
夕月さんの声がする。
幻聴?
心細すぎて幻聴が聞こえるのかな。
だって、こんな辺境のわけわかんないところにいるんだもん。
見つけだしてくれるはず、ない。
途端、ふわりとやわらかなものが頭から被せられた。
タオルだ。
私は驚いて振り返った。
目の前にいるのは、
紳士的で好青年な人。
「こんなところにいた。全く、何やってるんだよ」
ちょっと怒ったような、心配しているような声に私は目が熱くなった。
「夕月さぁん!」
私は夕月さんの美しいスーツを濡らしてしまった。
そんなことはお構いなしに、私はさらに夕月さんを巻き添えにする。
夕月さんも私を抱きとめてくれた。
「さ、帰ろう」
「……うん…」
夕月さんが近くに停めていた白い車に乗り込んで、
私たちはマンションに戻った。