秘密の鎖
夕月さんが指差したのは観覧車。


でも、ここまでノリノリで遊んどいてイヤとは言えず、
夕月さんが向かうままにまかせてついていった。


ゴンドラに向かいあって座った。


失敗。


向かいあうんじゃなかった。

居心地悪い。
気まずいっ!


でもそう思っているのは私だけで、

夕月さんはどんどん遠ざかる人や建物なんかを見るのに夢中で、
たいして気にしてなかった。


私も気を取り直して窓の外を見る。


ゆっくり、でも確実に遠ざかっていく薄暗い景色は、
やっぱり夕月さんのマンションのエレベーターに乗っているときのそれと似ていた。

ぽつぽつとついている明かりは、
なんだか幻想的でそれっぽいムード。


「観覧車といったらキスかな」


は!?


と思ったときには
もう夕月さんの顔はすぐ近くにあった。


肩を押さえつけられて、身動きがとれない。


「なっ…!」


抵抗しようとする私の唇に、
夕月さんは人差し指をあてがった。


「文句ある?」


あるよ!

大アリだよ!!


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