秘密の鎖

「でも、このマンションすごく高そうですよ?」


塾講師のバイト代で払いきれるの……?


私の素朴な質問に、カーペットに寝そべって本格的にくつろぎ始めたこころさんは
ああ、と笑顔になった。


「このマンション、私のダンナのものなの。私の弟ってことで大サービスして格安で貸してんのよ。その辺のアパートと同じくらいなんじゃないかしら、たぶん」


「うっそぉ!」


私は口に手をあてて目をまるくした。


いいの!?それで!?
てかうらやましい!!


「いっけない、美緒ちゃん寝かせとかなきゃいけないのについおしゃべりしちゃった!」


こころさんは慌てて立ち上がって謝った。


「いいですよ、元気でたし」


うん、ほんとに。


こころさんが来てくれたおかげで心のクヨクヨはどっかいっちゃったし。

こころさんはよかった、と微笑むと、私の部屋から出ていった。


いい人。
こころさん。


あんな素敵なお姉さんがいるなんて、
私は幸せ。



そこでふと、優也の顔が思い浮かんだ。


お母さんと2人、家に残してきてしまった優也。

元気だろうか。


私は全然、いいお姉ちゃんなんかじゃないね………


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